「一生モノのギターが欲しい」。
そう考えたとき、あなたの頭にはどんなギターが思い浮かぶでしょうか。
憧れのギタリストが奏でるあのサウンド、雑誌の表紙を飾る美しい木目のギター…。
しかし、新品のハイエンドギターは、その価格もまた最高峰。
気軽に手を出せる金額ではないのが現実です。
「高価な買い物だから絶対に失敗したくない」
「中古は個体差が大きそうで、どこを見て選べばいいか分からない」
その気持ち、痛いほどよく分かります。
こんにちは。
私は元大手楽器店で10年間ハイエンドギター担当として勤務し、これまでに1,000本以上のギターをお客様へお渡ししてきました。
現在はスタジオミュージシャンとして、日々ギターを弾いています。
そんな私が断言します。
本当に価値ある一本を賢く手に入れるなら、狙うべきは「中古のハイエンドギター」です。
この記事では、販売員としての「市場価値」の視点と、プレイヤーとしての「実戦的なサウンド」の視点の両方から、中古ハイエンドギター選びで失敗しないための全知識をあなたに授けます。
この記事を読み終える頃には、無数の中古ギターの中から最高の個体を見抜く「プロの目」が身についているはずです。
さあ、あなたの音楽人生を共にする、最高の相棒探しの旅へ出かけましょう。
目次
- 1 なぜ「中古ハイエンド」こそが狙い目なのか?見逃せない4つの理由
- 2 【年代・ブランド別】プロが注目する狙い目の中古ハイエンドギター
- 3 失敗は許されない!中古ハイエンドギターの状態を見極める9つの急所
- 3.0.1 1. 【最重要】ネックの状態 – 反り・ねじれ・ハイ起き
- 3.0.2 2. トラスロッドの余力 – ギターの寿命を左右する心臓部
- 3.0.3 3. フレットの残量 – 演奏性と将来のコストを測る
- 3.0.4 4. 電気系統の健全性 – ガリ・ノイズ・断線の有無
- 3.0.5 5. ボディの傷と塗装の状態 – 美観とサウンドへの影響
- 3.0.6 6. パーツのオリジナル度 – 交換・改造点の価値を見抜く
- 3.0.7 7. 付属品の有無 – 認定書、ハードケース、アーム…
- 3.0.8 8. 身体との相性(演奏性) – スペック表では分からない真実
- 3.0.9 9. 楽器本来の「鳴り」 – 生鳴りとアンプからの出音
- 4 後悔しないための購入ガイド|場所選びから価格交渉まで
- 5 まとめ
なぜ「中古ハイエンド」こそが狙い目なのか?見逃せない4つの理由
新品ももちろん魅力的ですが、新潟の島村楽器の中古のハイエンドギターには、それを上回るほどの大きなメリットが存在します。
なぜ今、多くの経験豊富なギタリストが中古市場に注目するのか。
その理由は4つあります。
理由1:価格的なメリット – 新品では手が届かない憧れのモデルが現実に
最大の魅力は、やはり価格です。
新品では70万円、80万円、あるいは100万円を超えるような憧れのモデルが、中古であれば数十万円も安く手に入るケースは少なくありません。
浮いた予算でアンプやエフェクターをアップグレードすることも可能です。
憧れで終わっていたギターが、現実的な選択肢として目の前に現れる。
それが中古ハイエンド市場の入口です。
理由2:「当たり」の個体に巡り会える可能性 – 弾き込まれ、鳴りが育った木材
ギターは「育つ」楽器です。
特に良質な木材が使われたハイエンドギターは、前のオーナーに大切に弾き込まれることで、ボディやネックが適切に振動するようになり、鳴りが深まっていきます。
新品の状態ではまだ硬さの残るサウンドが、時間と共に角が取れ、豊かな倍音を持つようになるのです。
これは、新品のギターをゼロから育てていくのとはまた違った、中古ならではの醍醐味と言えるでしょう。
理由3:現行品にはないスペックや希少性 – 特定の年代にしかない仕様の魅力
ギターの仕様は、時代と共に少しずつ変化していきます。
「あの年代のピックアップが良かった」「この時期のネックシェイプが手に馴染む」といった、特定の年代にしかない仕様を求めて中古を探すプレイヤーは後を絶ちません。
また、既に生産が完了してしまった限定モデルや、今はもう使えなくなった希少な木材(ハカランダなど)が使われたギターに出会える可能性があるのも、中古市場の魅力です。
理由4:資産価値としての側面 – 歴史に裏打ちされた値崩れしにくいモデルたち
Fender Custom ShopやGibson Historic Collection、Paul Reed Smithなどのトップブランドのギターは、そのブランド価値と品質から、中古市場でも価格が安定しています。
流行り廃りで価値が大きく下落することは考えにくく、大切に使えば、将来的に売却する際も購入時に近い価格で手放せる可能性があります。
これは単なる「消費」ではなく、あなたの音楽人生を豊かにするための「投資」と捉えることもできるのです。
【年代・ブランド別】プロが注目する狙い目の中古ハイエンドギター
では、具体的にどのようなモデルに注目すれば良いのでしょうか。
私が楽器店員時代に数多く扱ってきた経験から、特におすすめしたい年代とブランドをいくつかご紹介します。
2000年代〜2010年代:品質の安定とモダンな進化が生んだ「即戦力」
この年代は、CNCルーターなどの工作機械の精度が飛躍的に向上し、品質が非常に安定した時代です。
ヴィンテージの良さを継承しつつ、現代的な演奏性やサウンドを取り入れた「即戦力」となるギターが豊富にあります。
- Suhr (サー) / Tom Anderson (トム・アンダーソン)
この2ブランドは、現代のハイエンドギターの頂点と言っても過言ではありません。
寸分の狂いもないネックの作り込み、どこを弾いても均一なサウンドバランス、驚くほどの演奏性の高さ。
プロの現場で絶大な信頼を得ている理由が、一度弾けばすぐに分かります。
中古でも価格は高めですが、その価値は十分にあります。 - Fender Custom Shop (フェンダー・カスタムショップ)
フェンダーの最高峰ライン。
ヴィンテージの完全再現から、現代的なアレンジを加えたモデルまで多岐にわたります。
特に「マスタービルダー」と呼ばれる伝説的な職人が一人で作り上げたギターは、別格のオーラとサウンドを放ちます。
認定書の有無が価値を大きく左右するため、必ず確認しましょう。 - Paul Reed Smith (PRS) – Modern Eagle / Private Stock
「第3のブランド」としての地位を確立したPRS。
中でも最高級の木材を惜しげもなく使用したPrivate Stockや、期間限定で生産されたModern Eagleは、工芸品のような美しさと極上のサウンドを両立しています。
中古市場で出会えたら幸運と言えるでしょう。
1980年代〜1990年代:ヴィンテージとモダンの過渡期が生んだ「個性派」
この時代は、古き良きヴィンテージサウンドと、より多様な音楽に対応するためのモダンな仕様が融合し始めた面白い時期です。
現代のギターとは一味違う、個性的なモデルが見つかります。
- 初期のPaul Reed Smith (PRS)
80年代後半から90年代初頭にかけてのPRSは、創業者ポール・リード・スミス氏自身が深く製作に関わっていた時期。
現行品とは異なる独特の仕様(スモール・ヘッドストックなど)や、まろやかで温かみのあるサウンドに根強いファンが多く存在します。 - Gibson Historic Collection (ギブソン・ヒストリックコレクション) – 黎明期
90年代に始まったヴィンテージ・レスポールのリイシューシリーズ。
特に90年代後半から2000年代初頭のモデルは、使用された木材が良いとされ、「ヒスコレの当たり年」として中古市場で特に人気が高いです。 - James Tyler (ジェームス・タイラー)
80年代のLAスタジオシーンを席巻したコンポーネントギターの雄。
独特のミッドレンジが特徴的なピックアップと、派手なカラーリングは唯一無二。
HR/HMからフュージョンまで、ジャンルを選ばない万能さが魅力です。
【番外編】今、注目すべき日本の実力派ブランド
海外ブランドだけではありません。
日本のクラフトマンシップが生み出す、世界に誇るべきブランドも中古市場で注目です。
- Crews Maniac Sound (クルーズマニアックサウンド)
長年プロの現場を見てきた楽器店のプライベートブランド。
派手さはありませんが、現場で本当に「使える」サウンドと、頑丈な作り込みには定評があります。
本家ブランドを超える、と評価するプロも少なくありません。 - Sugi Guitars (スギギターズ)
元フジゲンのマスタービルダー、杉本眞氏が立ち上げたブランド。
「30年後、40年後にヴィンテージと呼ばれるギター」をコンセプトに、木材の選定から仕上げまで一切の妥協なく作られています。
そのサウンドと弾き心地は、まさに世界レベルです。
失敗は許されない!中古ハイエンドギターの状態を見極める9つの急所
ここがこの記事の核心です。
数十万円という大金を投じるのですから、失敗は絶対に許されません。
以下の9つのポイントを、呪文のように覚えてください。
1. 【最重要】ネックの状態 – 反り・ねじれ・ハイ起き
ギターのコンディションの9割はネックで決まります。
ここは時間をかけて、入念にチェックしてください。
まず、ギターを構え、ボディ側からヘッドの先端を「透かし見る」ようにして、ネックがまっすぐかどうかを確認します。
次に、1フレットを左手で、最終フレットを右手で押さえ、その中間地点(7〜9フレットあたり)で弦とフレットの間にわずかな隙間があるかを見ます。
名刺1枚分くらいの隙間(0.3mm〜0.6mm程度)がある「ごくわずかな順反り」が、最も理想的な状態です。
隙間が全くない「逆反り」や、隙間が大きすぎる「順反り」の個体は調整が必要になります。
2. トラスロッドの余力 – ギターの寿命を左右する心臓部
ネックの反りを調整するのがトラスロッド。
これが限界まで締め込まれていると、今後ネックが反ってしまった時に修正ができなくなります。
つまり、そのギターの寿命が尽きている可能性があるということです。
これは必ず店員さんに許可を得て、「トラスロッドは左右どちらにも効きますか?」と確認してください。
左右に45度ほど軽く回してみて、スムーズに動き、ネックがそれに反応するかしっかりチェックさせてもらいましょう。
3. フレットの残量 – 演奏性と将来のコストを測る
フレットは消耗品です。
残量が少なくなると、チョーキング時に音が詰まったり、サスティンが短くなったりします。
一般的に「8割以上」残っているのが理想とされます。
特定のポジションだけが極端に凹んでいる場合は、前のオーナーの弾き癖が強い証拠です。
フレット交換は5万円以上の高額なリペアになるため、残量はシビアに判断しましょう。
4. 電気系統の健全性 – ガリ・ノイズ・断線の有無
必ずアンプに繋いで音を出しましょう。
ボリュームやトーンのノブを回した時に「ガリガリッ」というノイズが出ないか。
ピックアップセレクターを切り替えて、全てのポジションで正常に音が出るか。
シールドを挿すジャック部分を軽く動かしてみて、音が途切れないか。
地味ですが、非常に重要なチェックポイントです。
5. ボディの傷と塗装の状態 – 美観とサウンドへの影響
小さな打痕やバックル傷は、中古である以上ある程度は仕方ありません。
しかし、木部まで達するような大きな傷や塗装の剥がれは、ギターが大きな衝撃を受けた可能性を示唆します。
ヴィンテージギターに見られるラッカー塗装のウェザーチェック(ひび割れ)は、一般的には「味」として評価されますが、過度なものは保管状態が悪かった可能性も考えられます。
6. パーツのオリジナル度 – 交換・改造点の価値を見抜く
ペグが交換されていないか、ブリッジのサドルはオリジナルのものか。
特に重要なのがピックアップです。
より良いサウンドを求めて高品質なものに交換されている場合はプラス評価ですが、オリジナルのピックアップが付属しているかどうかも確認しましょう。
元に戻せる状態であることが、資産価値を保つ上では重要です。
7. 付属品の有無 – 認定書、ハードケース、アーム…
特にFender Custom ShopやGibsonのヒストリックモデルにおいて、認定書(Certificate of Authenticity)はギターの戸籍謄本のようなものです。
これがあるかないかで、買取価格が数万円〜十数万円変わることも珍しくありません。
オリジナルのハードケースやトレモロアーム、保証書など、付属品が揃っているかしっかり確認してください。
8. 身体との相性(演奏性) – スペック表では分からない真実
こればかりは、弾いてみないと分かりません。
ストラップを付けて立った時の重量バランス、ネックシェイプが自分の手にしっくりくるか。
スペック上の数値だけでは判断できない、あなた自身の身体との相性を確かめてください。
9. 楽器本来の「鳴り」 – 生鳴りとアンプからの出音
最後に、そのギターが持つ本質的な「鳴り」を感じてください。
まずはアンプに繋がず、生音でコードを弾いてみましょう。
ボディからネック、ヘッドの先まで、ギター全体が「ヴィーン」と震える感覚はありますか?
次にアンプに繋ぎ、クリーントーンで各弦の分離感やサスティンを、ドライブサウンドで音の粘りや倍音の豊かさを確認します。
この「鳴り」こそが、あなたとそのギターとの相性そのものなのです。
後悔しないための購入ガイド|場所選びから価格交渉まで
最高の1本を見つけるための最後のステップです。
どこで、どのように買うべきかを知っておきましょう。
どこで買うべきか? – 楽器店 vs ネットオークション・フリマ
結論から言えば、特に最初の1本は信頼できる楽器店での購入を強く推奨します。
| 楽器店 | ネットオークション・フリマ | |
|---|---|---|
| メリット | ・試奏ができる ・調整/クリーニング済み ・専門知識を持つ店員に相談できる ・保証やアフターサービスがある | ・価格が安い場合がある ・希少なモデルが見つかることがある |
| デメリット | ・ネットよりは価格が高め | ・現物を確認できない ・状態の判断が難しい ・保証がなく、トラブルは自己責任 |
ネットでの購入は、ギターの状態を写真と文章だけで完璧に見抜く「目」が養われてから検討すべき選択肢です。
信頼できる楽器店の見つけ方
良い楽器店には共通点があります。
- ハイエンドギターの在庫が豊富で、専門フロアがある
- リペアマンが常駐しており、購入後の調整も相談できる
- 店員さんがこちらの質問に的確に、そして愛情を持って答えてくれる
こういうお店は、買い取ったギターを次に弾く人のことまで考えて、丁寧にメンテナンスしているものです。
価格交渉は可能? – プロが実践する交渉のタイミングと伝え方
基本的には表示価格での購入が前提ですが、交渉の余地が全くないわけではありません。
もし交渉するなら、ただ「安くして」では成功しません。
「このギターが本当に気に入っていて、真剣に購入を考えています。もし可能であれば、あと少しだけお値段のご相談はできませんか?」
このように、購入の意思とギターへの熱意を丁寧に伝えることが、店員さんの心を動かすコツです。
試奏を120%活用する秘訣 – 自分の機材持ち込みも検討
試奏は、遠慮せずに時間をかけて行いましょう。
できれば、普段自分が使っているアンプやエフェクターがお店にあれば、それで試させてもらうのがベストです。
環境が違うと、ギターの印象も大きく変わります。
いつも弾いているフレーズ、好きな曲のリフ、美しいアルペジオ。
あらゆる角度から、そのギターのポテンシャルを引き出してあげてください。
まとめ
中古ハイエンドギター選びは、宝探しのようなものです。
最後に、この記事で最も伝えたかったことをまとめます。
- 中古ハイエンドギターは、価格、育った鳴り、希少性、資産価値の全てで大きな魅力を持つ。
- 状態の見極めは「ネック」「トラスロッド」「フレット」の3点が最重要。
- 認定書などの付属品の有無は、ギターの価値を大きく左右する。
- スペックだけでなく、最終的には自分の身体と感性で「鳴り」を感じることが大切。
- 購入は、試奏とアフターケアが万全な信頼できる楽器店で行うのが鉄則。
状態を見極める「目」さえ養えば、中古ギターはあなたの音楽人生において、これ以上ない最高の選択肢となります。
この記事で得た知識は、あなたを理想のギターへと導くための羅針盤です。
さあ、自信を持って、あなただけの一生モノの相棒を探しに出かけましょう。
その先には、今よりもっと豊かで、刺激的な音楽ライフが待っています。



