塗布工程の改善を手伝っている堀内です。
前職では自動車部品メーカーの生産技術部門に約20年いて、接着やシールのラインを何本も立ち上げてきました。
2液材料の塗布をロボット化する相談を受けると、ロボットの精度やティーチングの話ばかりが先に出てきます。
ところが実際に止まるのは、ほぼディスペンサ側です。
この記事では、私が現場で何度も見てきたつまずきどころを3つに絞ってお話しします。
混合比率のズレはロボットでは直せない
2液型の材料は、主剤と硬化剤の比率が狂うとそもそも固まりません。
接着剤メーカーのアルテコは、公式サイトの正しい使い方で硬化剤の誤差を5%以内に収めるよう案内しています。
ロボットがどれだけ正確に動いても、この比率は吐出側でしか担保できません。
武蔵エンジニアリングの技術コラムでも、正確に混合できないと硬化不良などのトラブルが起きると書かれています。
やっかいなのは、比率ズレの不良は見た目で分からないことです。
硬化は一応するのに強度が出ない、というかたちで後工程や市場で発覚します。
だからロボット化のときは、粘度が変わっても吐出量が変わりにくい容積計量方式のポンプを私は選びます。
ロボットのヘッドに載せる前提なら、ヘッドの重量制限も同時に見ておく必要があります。
実際の製品を見るとイメージしやすいと思います。
たとえばナカリキッドコントロールの2液型ディスペンサー(塗布装置)の製品一覧には、ロボットのヘッド部との組み合わせを想定して本体1.8kgまで軽量化した機種が載っています。
可使時間とミキサの相性を先に決める
2液を混ぜた瞬間から硬化は始まります。
混合後に使える時間を可使時間、いわゆるポットライフと呼びますが、ロボット塗布ではこれが経路内で切れると詰まります。
ラインが止まるのは昼休みや段取り替えのときです。
午前中は問題なかったのに、再立ち上げの1本目でミキサから固まった樹脂が出てくる。
これは私が何度も経験した光景です。
ミキサの方式は材料に合わせて選びます。
- 可使時間が短い材料は、混合液が滞留しない使い捨てのスタティックミキサが向いている
- 高粘度や比率差の大きい材料は、回転で混ぜるダイナミックミキサを検討する
- 夏場は材料温度が上がって可使時間が縮むので、タンクの温度管理を入れる
- 停止から再開するときは、捨て吐出の手順をロボットのプログラムに組み込む
材料メーカーのデータシートにある可使時間は、あくまで規定温度での値です。
自社の工場の夏の室温で試してから、停止できる時間を決めてください。
ロボットの速度と吐出量を同期させる
ロボットはコーナーで減速します。
吐出量が一定のままだと、直線部は細く、コーナーは太いビードになります。
兵神装備の塗布ロボットに関する技術コラムでは、対策として2つの方法が紹介されています。
速度が変わる区間ごとに吐出量を教示する「パターン切替」と、ロボットの速度信号を受けて吐出量を追従させる「完全同調制御」です。
どちらを使うにしても、ディスペンサ側がロボットからの信号を受けられる仕様かどうかを、機種選定の段階で確認してください。
後から連携できないと分かって、手動で速度を一定に落として運用している現場を見たことがあります。
ビードの不良が出たときに疑う場所は、症状ごとにだいたい決まっています。
| 症状 | 最初に疑う場所 |
|---|---|
| コーナーだけ太い | 速度と吐出量の同期設定 |
| 朝は良いのに昼から悪い | 材料温度と可使時間 |
| 固まるが強度が出ない | 混合比率と計量ポンプ |
| 再立ち上げ直後に詰まる | 停止時の捨て吐出手順 |
まとめ
ロボット塗布で2液を扱うときの注意点は、混合比率、可使時間とミキサ、速度同期の3つです。
どれもロボットの性能ではなく、ディスペンサ側の選定と運用で決まります。
導入前には、実際に使う材料をメーカーのテストルームに持ち込んで流してみることをおすすめします。
カタログの数値より、自社の材料で出た結果のほうがはるかに信用できます。



